バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰になる病気の中で最も代表的なものです。
頻度
1000人に2〜6人いると言われ、男女比は1:4.6で女性に多い疾患です。
病態
自己免疫疾患の1つであり、本来外敵(ウイルスや細菌)から身を守るための免疫(抗体)が、間違って自分の身体すなわち甲状腺に攻撃をしてしまうことで発症します。この抗体(TSHレセプター抗体(TRAb)、甲状腺刺激抗体(TSAb))が甲状腺を刺激することにより、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるようになります。
症状
頻脈・動悸、手足の震え、発汗増加、倦怠感や体重減少などが認められます。また、甲状腺が大きく腫れ、眼球の突出も認められることがあります。
検査
甲状腺機能検査では、FT4・FT3が上昇し、TSHが低下します。軽度の場合は、TSHのみ低下する事もあります。
自己抗体(TRAb、TSAbの片方もしくは両方)が陽性となります。
甲状腺エコーでは、甲状腺内の血流の増加が見られます。
治療
内服治療、アイソトープ治療、手術があります。
基本的には、最初は内服治療で開始することが多いですが、内服薬の副作用が出てしまった場合や、治療の効果が乏しい・再燃を繰り返す場合、早めの寛解を希望される場合などは、アイソトープ治療や手術を検討していきます。
内服治療
抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジール/プロパジール)
バセドウ病治療の主軸となりますが、副作用の多い薬剤のため注意が必要です。皮疹・掻痒感、軽度肝機能障害は比較的認められやすく、一方比較的頻度は少ないですが無顆粒球症、重症肝機能障害、ANCA関連血管炎など重篤な副作用も出現します。
特に、使用開始後3ヶ月間は、副作用の出現頻度が高いため、2〜3週間毎の検査が必要となります。
メルカゾールの方が副作用の頻度はやや少なく効き目も良いですが、妊娠初期のメルカゾール使用により胎児に影響が出る可能性があるため、妊娠を計画する際は他の薬剤に変更することが望まれます。
無機ヨウ素薬
本来、ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料ですが、大量のヨウ素を摂取すると、一時的に甲状腺ホルモンの産生が抑えられることを逆手にとった治療です。
目立った副作用はなく、また抗甲状腺薬と比べ効果の出現が速いため、抗甲状腺薬と併用されることも多いですが、2週間程度で効果が薄れることもあり注意が必要です。
アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)
ヨウ素が甲状腺ホルモンの材料として甲状腺に取り込まれることを利用した治療です。放射性ヨウ素を甲状腺に取り込ませることで、甲状腺の細胞を破壊し治療します。放射性ヨウ素は内服薬で経口摂取します。摂取後は徐々に効果が得られ、半年〜1年程度で安定し抗甲状腺薬が中止できることが多いですが、機能低下症となった場合は、以降、甲状腺ホルモン補充療法を継続する必要があります。
また、治療により甲状腺腫も縮小が期待できますが、一方でバセドウ病眼症の患者さんは眼症が悪化する場合もありますので、注意が必要です。
手術
甲状腺を手術で切除することにより、物理的に過剰な甲状腺機能を抑えます。最も早く確実に治療効果が得られるというメリットがあります。再発を予防するため、現在では「亜全摘」より「全摘」が主流となっています。全摘術後は甲状腺機能低下となるため、甲状腺ホルモン補充療法が必要になります。手術のデメリットとしては、反回神経障害による声帯麻痺や副甲状腺機能低下症などが挙げられます。